広告

「コレクター福富太郎の眼~昭和のキャバレー王が愛した絵画~」感想とグッズ

美術展・美術誌の感想
広告

度重なる緊急事態宣言で、半ば諦めていた展覧会、

なんとかギリギリ滑り込みで行くことができました。

本当、行って良かった。行けて良かった。

 

  • 福富太郎という人物、生き様に興味がある
     
  • 明治~昭和にかけての日本画を思う存分鑑賞したい
     
  • タブー視されがちな戦争画だけれど、日本人として見ておきたい

そんな思いで鑑賞しに行きました。

  

福富太郎氏は先月の芸術新潮でも取り上げられていて

以前、少しだけこの記事で触れています。

 

広告

感想

 

全体感想

 

事前予約制だったこともあり

比較的空いている中でゆっくりと鑑賞できました。

 

個人的には最初と2番目の展示室が見ごたえがあり、

見ている中でも、やっぱり鏑木清方の作品が好みでした。

全て美しかった。

 

後、「軍人の妻」は日本人として見ておきたい作品だったので

胸がぎゅーっと詰まって苦しくなるような気持ちにもなったけれど

ゆっくり見られて良かったと思います。

 

 

そして、久々の東京ステーションギャラリー

文化財に指定されているむき出しのレンガが味を出していて

本当、雰囲気が良いですね。

 

 

 

 

春に見に行った「渡辺省亭展」「あやしい絵展」

出展されていた作品も数点ありましてね。

 

「妖魚」「道行」

「お疲れ様です~」って声をかけたくなる感覚。

売れっ子も、あちらこちらへ行かないといけないから大変ですね。

「あやしい絵展」よりずっと空いていて、ゆっくり見られました。

  

福富氏の財力が半端ない

 

具体的にいくらで購入した、とか

そんな下品な情報はなかったのですが

個人の規模でこれだけ収集するって凄いなぁ、と。

(きっと今回展示してない作品もまだまだあるのでしょうが)

物凄く見ごたえがありました。

 

とても財力があったキャバレー経営者の唯一夢中になったもの。

きっと駆け出しの頃は多少無理してでも購入されていたのかな…。

見ていても収集に対する熱意がすっごく強く伝わってきました。

「いつから絵画に興味があったか」と聞かれた際には

「3歳の頃から」と答えていたようです。

 

福富氏とそれを取り巻く画家や画商たちのドキュメンタリー

絶対面白いと思うんだけど、映画にならないかな…。笑

 

鏑木清方の美人画

 

この展覧会、

まずは鏑木清方の美人画から展示が始まっています。

 

展覧会には鏑木清方と直接やり取りした手紙の現物も展示されていました。

福富氏がコレクションしてくれていることが喜ばしい

という旨の内容が手紙に書かれていたり、

福富氏が「好みの女性は?」と聞かれた時に

「鏑木先生の描くような女性」と答えたエピソードがあったり。

二人の良好な関係性が伺えます。

 

鏑木清方の絵画は私もとっても好みで、見ていて幸せでした。

「刺青の女」「薄雪」は本当に美しかった。

(ちゃっかりミュージアムショップでクリアファイルを購入)

 


鏑木清方「薄雪」

 

その後、清方を取り巻く画家たちにも収集の幅を広げ、

清方の先達として敬愛していた画家:梶田半古渡辺省亭

清方のライバル:富岡永洗鰭崎英朋

互いを尊敬しあう間柄:小村雪岱

などの絵画を集めるようになったようです。

 

その時代の風俗×女性

 

福富氏が欲しいと思う絵画の条件として

「その時代を懸命に生きた存在感のある女性」

と、挙げていたよう。

 

今ほど写真や動画が無い時代の証言となるものが絵画であり

その風俗画の中から伺える生活感のようなものに魅力を感じる、

というのはとても納得します。

 

ここの展示で好きだと思った絵画

  • 鰭崎英朋「生さぬ仲」
  • 池田輝方「お夏狂乱」
  • 池田蕉園「秋苑」
  • 松本華羊「殉教」

ちょっと変わり種?で面白かったのは

伊藤深水「戸外は春雨」

購入した図集より。

 

日劇ミュージックホールの楽屋をテーマにしていて、

正に時代の証言者のような絵。

 

巻物になっていて、

残念ながら2番目の画像下側の黒子さん?たちの部分は

巻かれた状態で見られませんでした…。

 

個人的に…渡辺省亭は花鳥画の方がやっぱり好きです。

 

思ったよりも、ほっこり系の絵画があった

 

陰のある愁いを帯びた女性の絵画だらけかと思いきや

意外とほっこり系の絵画もあって、

見ていて面白かったです。

  • 尾竹竹坡「ゆたかなる国土」
     
  • 池田輝方「幕間」

などは絵から伝わってくる雰囲気が素敵。 

(仕方無いのかもしれないけれど、少し保存状態が気になりました)

 

個人的に好みだったのは上村松園「よそほい」

母の愛ですねぇ。

優しく全てを包み込むような娘への愛情が伝わってきて

暖かい気持ちになります。

とても繊細で美しい絵でした。

 

関西の作家さんの作品

 

階段を降りてすぐは京画壇の展示になります。

久々の「道行」にもご対面。

 

何度見ても、胸が締め付けられるような気持ちになりますね。

女性は遊女で、男性は妻子のある身。心中ものです。

 

もう女性は半分魂を吸い取られているような生気の無さで

握っている手もぽろっと外れちゃいそう。

直ぐそこに迫っている「死」を

静かだけど臨場感たっぷりに描き出していて

何度見ても響く作品です。

 

「あやしい絵展」の時にはわからなかったのですが

心中ものの絵画買い手が付きにくく値段も付きにくい

と、画商が困っていたところ、

福富氏がこの絵に惚れこんでスムーズに交渉が進んだよう。

 

こういうコレクターありきの展覧会ってあまり経験が無いのですが

絵画のより深い背景や経緯も知ることができて面白い。

 

あと、北野恒富の作品というのは

ぱっと見で「あぁ北野さんの作品ね」と判別するのが難しいなぁ

と思いました。

 

これも


(浴後)

これも


(ゆうべ)

「道行」と同じ北野恒富の作品。

画風が随分違います。

ここまで描き分けられるっていうのが、そもそも凄い。

 

他、有名どころでは

サザンのジャケットでオマージュされている

岡田三郎助「あやめの衣」なども見ることができて幸せでした。

思ったよりも小さな絵で、本当、実際見てみると印象が変わります。

これ、ポーラ美術館へ所蔵される前、一旦福富氏が所蔵していたんですね。

知らなかった。

福富氏の絵画を見る眼が確かだったのでしょうね。

 

戦争画

 

展示のラストは戦争画。

なんと書けば良いのか、

本当によく戦後直ぐのあの時代に戦争画を収集したなぁ、と…。

 

自分よりも若い、

24歳前後の航空士官の清々しく潔い表情などを見てしまうと

なんとも苦しい思いになりますね…。

 

満谷国四郎「軍人の妻」は最後に展示されていました。

近くで見ると、右目に涙が描かれているんです。

たかだか100年ちょっと前、

悲しいって感情を思い切り出したくても

近しい人にすら感情をストレートに出せない時代があった。

 

なんだか平和ボケしてしまっているけれど

一生懸命生きないとダメだな、って思いました、本当。

 

この絵、最初はアメリカの大学にあって

あまり良い保存状態ではなかったようです。

この絵も日本に帰ってくることができて良かったですね。

 

ミュージアムグッズ

 

最後に恒例のお披露目です。笑

 

毎度おなじみの、図集とファイル。

 

鏑木清方の「刺青の女」と「薄雪」は見た瞬間に買おうと思いました。

「道行」はマスクケースだそうです。(なんとなく買ってみた)

 

図集のデザイン良いですね!

福富氏のキャバレー経営者としての功績もリスペクトしているようなデザインが素敵。

昭和レトロポップな表紙とフォント

に、妖魚がニョッと顔を出しているのが可笑し楽しいです。

 

久々の展覧会、幸せで贅沢なひと時でした。

明日までですが、ご興味のある方是非。

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました